アーンド・バリュー・マネジメント
概要
アーンド・バリュー・マネジメント(EVM)とは、プロジェクトの進捗を 「 予算 」 、 「 実績 」 、そして実際に完了した作業の 「 価値 」 という 3 つの指標で測定する管理手法である。従来の「予算に対していくら使ったか」という視点に、「計画に対してどこまで終わったか」という視点を金額ベースで統合することで、プロジェクトの「健康状態」を客観的に可視化し、最終的なコストや納期を予測する。
評価 (1–5)
- 適用性: 4
- 有効性: 5
- 複雑さ: 4
- 誤用のリスク: 2
評価コメント
プロジェクトの現状を「金額」という共通言語で定量化できるため、ステークホルダーへの説明責任を果たす上で極めて強力である。しかし、前提として詳細な 「 WBS(作業分解構成図) 」 と予算配分が必要であり、運用コストが高い。小規模で流動的なプロジェクトよりも、大規模かつ計画重視のプロジェクトで真価を発揮する。
最初の問い
「 私たちは今、1,000 円の予算を使って 1,000 円分の『 価値 』を本当に生み出せているか? 」
目的
- スケジュールとコストの進捗を統合し、プロジェクトの真の進捗率を把握する。
- 効率指数(CPI/SPI)を用いて、将来の着地コスト(EAC)や完了時期を論理的に予測する。
- 早期に異常を検知し、エビデンスに基づいた是正処置(リソース投下など)を決定する。
質の低い問い
- 「予算はまだ余っているか?」(予算の残高だけでは、作業が遅れているリスクを見逃す)
- 「予定していた作業は終わったか?」(「終わった」の定義が曖昧だと、進捗率が不正確になる)
- 「現場は頑張っているか?」(精神論では、客観的な納期予測やコスト管理はできない)
使い方
- 3 つの基本値を算出する
- PV (Planned Value): 特定の時点までに完了させる予定だった作業の予算。
- AC (Actual Cost): その時点までに実際に費やしたコスト。
- EV (Earned Value): 実際に完了した作業に対して割り当てられていた予算(出来高)。
- 差異と効率を分析する
- CV (Cost Variance): $EV - AC$ (プラスなら予算内、マイナスなら超過)。
- SV (Schedule Variance): $EV - PV$ (プラスなら予定より早い、マイナスなら遅延)。
- CPI (Cost Performance Index): $EV / AC$ (1 以上なら効率良好)。
- 将来の数値を予測する
- EAC (Estimate At Completion): 現在の効率が続いた場合の最終的な総コストを算出する。
アウトプット例
- 週次進捗レポート 「現在の CPI は 0.8 であるため、このままでは最終的に予算を 20% 超過する見込みである。是正のために作業プロセスを見直す必要がある」といった定量的な報告。
- S 字カーブによる視覚化 PV, AC, EV の 3 本の線をグラフ化し、計画と実績の解離(ギャップ)を直感的に示す図。
ユースケース
- ビジネス: システム開発プロジェクトの原価管理、土木・建設工事の工程管理、PMO による複数プロジェクトの横断監視。
- 意思決定 / 思考: リソースを追加投入すべきか、あるいはスコープを縮小すべきかの判断基準が必要なとき。
典型的な誤用
- 「 100% か 0% か 」以外の進捗評価: 中途半端な作業に「 50% 完了」といった主観的な数値を与えると、EV の信頼性が下がる(「 0/100 法 」などの厳格な基準が必要)。
- AC(実績コスト)の集計遅延: 実際の支出データが上がってくるのが遅いと、分析結果が「過去のもの」になり、手遅れになる。
- 品質の無視: EV が高くても、成果物の品質が悪く手戻りが発生すれば、後の工程で AC が急増し、指標は一気に悪化する。
他のモデルとの関係
- 補完的: WBS (Work Breakdown Structure)、クリティカル・パス・メソッド (CPM)
- 関連: S字カーブ分析